
Concept
モノの側から人間を見たとき、人間はどのような姿に見えるのだろう。
たとえばパソコンにとって、人間との主な接点はキーボードに触れる「指」である。だとすれば、パソコンから見た人間は、全身をもつ存在ではなく、指だけを身体にもつ生き物のように見えるかもしれない。
人間は、動物やモノを人間になぞらえて理解することを「擬人化」と呼ぶ。私はその視点を反転させ、モノの側から人間を捉えることを「擬物化」と名づけた。
本作では、人間を観察する主体を人間からモノへ移すことで、普段自明だと思っている「人間の姿」を組み替えることを試みている。
制作背景
本作は、Covid-19のパンデミックによって自宅で一人で過ごす時間が増えたことをきっかけに始まった。
長い時間を部屋の中で過ごすうちに、パソコンには指で触れ、眼鏡は顔にかけ、ベッドには身体を横たえるというように、自分の身体がモノごとに異なる仕方で接していることを意識するようになった。
一人の人間であっても、どのモノとの関係から見るかによって現れる身体は異なる。そこから、それぞれのモノにとって人間とはどのような存在なのかを想像し始めた。
作品構想
「パソコン」「アイスクリーム」「パン」「ベッド」「お茶」「眼鏡」「ドライヤー」「照明」「インターホン」「顔ダニ」など、身の回りにあるモノや存在を一つずつ観察した。
パソコンなら「キーボードに触れる指」、ベッドなら「横たわる身体」というように、それぞれが人間と接触する身体部位や、人間が繰り返す動きを抽出する。
そこから、人間の身体をモノごとの知覚や関係に合わせて組み替え、それぞれ異なる形態と運動をもつ彫刻へと変換した。
制作プロセス
日常生活の中で、モノと人間がどのように接しているかを観察した。
それぞれについて、人間のどの身体部位と接するのか、どのような動作が繰り返されるのかを抽出し、そこから身体の形態や運動を再構成した。
そのイメージをもとに、Arduino、サーボモーター、ステッピングモーター、不要品などを組み合わせ、複数のキネティック・スカルプチャーとして制作した。